2021年4月2日金曜日

サン=サーンスとブラームスのクラリネット・ソナタ

  全音楽譜出版社のオンライン・ショップの近刊予告の中にサン=サーンスのクラリネット・ソナタがあった(https://shop.zen-on.co.jp/p/549019)。これはうれしい。作曲者の死の年、つまり、ちょうど100年前に書かれた作品だが、今なお輝きを失わない名曲である。その軽やかさと瑞々しさは到底80代半ばの人の手になるものだとは思えない(もっとも、歳相応の渋さや枯淡さはあるが)。

 やはり晩年にクラリネット・ソナタを書いたのが全く同世代のブラームスだが、両者のソナタを比べてみると面白い(ブラームスには2曲あるが、同じ変ホ長調によるものの方が比べやすかろう)。まず、やはりそれぞれに各自の母語の響きを思わせるところがある。すなわち、ブラームスの場合にはドイツ語、サン=サーンスの場合にはフランス語の響きが音楽からは聞こえてくるような気がする。そして、前者にも渋さや枯れたところがあるものの、まだ人生に対してどこか「吹っ切れていない」、悶々とした感じを受ける(まあ、そこが人々の共感を呼ぶ点かもしれない)。他方、サン=サーンスの方にも十分パッションはあるものの、ドロドロしたものが濾過されているような感じがする。私はいずれのソナタも好きであり、いつか演奏会で両者ともに取り上げられているのを聴いてみたいと思っている。

 全音はこのサン=サーンスのソナタと同時にヴァイオリンの小品集をも出版するようだが、他にもいろいろ彼の楽譜を出してくれるとうれしい。ピアノ協奏曲やピアノの小品集などはそれなりに需要があるのではないだろうか。