拙著『黄昏の調べ』(春秋社、2016年)では「現代音楽」に対して相当辛辣なことを書いたが、それには「愛情の裏返し」のようなところもある(同書では「愛憎相半ばする」とも述べた)。当時出たいくつかの書評ではその点はきちんと読み取ってもらえたが、もしかしたら、同書を「『現代音楽』糾弾の書」と解する読者も少なからずいるかもしれない。
だからというわけでもないが、あるときから、もっと素直に「現代音楽」への愛を語った本を書いてみたい、との想いが生じた。そこではもっぱら「聴く」ことに的を絞り、具体的な作品を取り上げ、個別に「どう聴けば、楽しめるか」をできるだけ平易に(「註」など抜きで)述べる(ただし、その行間に「批評」を忍び込ませる)つもりだ。さて、この計画は実現するだろうか、それとも、他のいくつかの計画同様、絵に描いた餅で終わるだろうか。できれば実現したいものだが。