2021年4月21日水曜日

「ベートーヴェン生誕250年記念 杉山哲雄 ピアノ&トーク・リサイタル2020 《ベートーヴェンと三人の先駆者》」

  先日、ピアノの杉山哲雄(1948-)先生から郵便物が届いた。さっそく開封してみると、先生が昨年行った「ベートーヴェン生誕250年記念 杉山哲雄 ピアノ&トーク・リサイタル2020 《ベートーヴェンと三人の先駆者》」全3回分の録音だった。ここでの「三人の先駆者」とはバッハ、ハイドン、モーツァルトのことであり、各回に1人ずつがベートーヴェンの作品とともに取り上げられている。

 まず、第1回「ベートーヴェンとバッハ」を聴いてみた。そこで取り上げられているのはバッハ作品では平均律第1巻の第16番と《イタリア協奏曲》、ベートーヴェン作品ではソナタ第1番、連弾曲《歌曲「君を思う」による6つの変奏曲》WoO. 74と「悲愴」ソナタである。そして、各曲の演奏に先立って「バッハの平均律がもたらしたもの、統一の思想」「ソナタ形式の確立と主題労作」「ブルンズウィック家令嬢と連弾曲、新しいソナタを求めて」といったかなり詳しいトークがつく。演目は(連弾曲を除けば)お馴染みの「定番」ばかりだが、はっきりした企画性があり、演奏にもそれがはっきり現れているがために、まことに聴き応えがある(会場で直接聴けなかったのが残念!)。杉山先生の音楽づくりはその人柄と同じく、まことにストレートかつ繊細、そして、ユーモアにも欠けていない。最初の平均律の前奏曲から、すっかり音楽に引き込まれてしまい、トークとともに最後までたっぷり楽しませてもらった。

 残りの2回分はこれから聴くが、とても楽しみだ。学生(1つめの修士)時代(驚くべきことに今からちょうど30年前のことだ)、先生のレッスンではほとんど漫才のようなやり取りをしていたが、そんな不出来な学生にもこうして録音をお贈りくださるとは、まことにありがたいことである。先生にはまだまだ元気に演奏をつづけていただきたいし、いずれ再び実演を聴ければうれしい。