昨日のネタに関連するものを。リストの《ノルマの回想》は1841 年の作品だが、そこには当時のヴィルトゥオーソの好敵手、ジギスモント・タールベルク(1812-71)への対抗心が露骨に現れていて面白い。
そのタールベルクも《ノルマ》に基づく作品、すなわち、《ベッリーニの『ノルマ』による大幻想曲と変奏曲》作品12(1834)を書いているのだが、明らかにリストはそれを意識している。というのも、そこで用いらられている原曲オペラの素材がいくつか共通しているのみならず、リストはいっそう派手な書き方をしているからだ。たとえば次の箇所などどうだろう(①はタールベルクの作品で、6’48”から、②はリストの作品で、4’18”からの箇所を聴かれたい:①https://www.youtube.com/watch?v=dFg02WEwlCM、②https://www.youtube.com/watch?v=XEkDsUrmFC4)
また、リストはタールベルクが得意とした「3本の手」、すなわち、中声部で旋律が歌われ、上下を分散和音や音階で囲み、あたかも3本の手で弾いているかのような印象をもたらす技法をわざわざ《ノルマの回想》で用いている(1a――11’48”から――と1b――14’28”から――がリスト、2a――4’04”から――と2b――13’52”から――がタールベルク:1a と1b https://www.youtube.com/watch?v=XEkDsUrmFC4 、2a https://www.youtube.com/watch?v=_3maaBk9vOw、2b https://www.youtube.com/watch?v=3dZbQei8PPY)
リストの作品もタールベルクの作品もそれぞれに面白いが、《ノルマ》ではリストの方が一枚上手か? ともあれ、「人間的な、あまりに人間的な」競争心に関わるエピソードではある。
戦争を一刻も早くやめさせるためならばともかく、火に油を注ぐかのような外国への―――しかも経済の衰退で疲弊する多くの自国民を一切顧みない――資金援助が果たして「国益」にかなうものかどうか……。