ようやく長い夏も終わりを迎えつつある。すると、室内楽曲を聴きたくなってくる。ちょうどクリスティアン・マルティン・シュミット『ブラームスとその時代』(江口直光・訳、西村書店、2017年)を読んでいる最中なので、彼の――いかにも秋に似つかわしい――音楽のディスクや楽譜に手が伸びる。
同書には教えられるところが多く、ブラームスの作品をいろいろと詳しく読み直してみたくなっている。彼の創作はいわば「温故知新」の産物だと言えようが、その歴史的な意味を同書はまことに簡潔かつ鮮やかに、具体的な作品分析も踏まえて描き出している。こうしたものを読むと、ブラームスのすごさに今更ながらに圧倒されるとともに、「いったい今まで自分は何を聴いてきたのだろうか?」と反省もさせられる。
ともあれ、この秋と冬はシューマンとブラームスの室内楽曲を楽しみつつ学ぶことにしよう。