2024年9月6日金曜日

妙なる調べの正体は

  数日前の朝、ラジオをつけるとなにやらクラリネットの妙なる調べが耳に入ってきた。知っている曲ならばものの12秒でわかるのだが、このときは「?」だった。が、知らない、あるいはよく覚えていない曲でもじっと聴いていると、多くの場合、様式から誰の手になるものかは判明する。そこで、しばらく聴き続けた。すると、あるときにはコープランドのように聞こえたり、またあるときにはヒンデミットのように思われたりする。だが、そのいずれでもないこともわかる。そこでさらに先へ進んだときに、ぱっと思い出した。「ああ、これはバーンスタインの交響曲第2番《不安の時代》だ」と。何度も聴いている作品なのだが、ぱっと聴いたわかるほどには頭に入っていなかったのである。

 ともあれ、これで一安心。その後は心穏やかに聴き進めた。が、こうして久しぶりにこの曲に接してみると、その「ごた混ぜ」ぶりを改めて面白く感じる。よく言えば、多様性に富む、悪く言えば、様式上の統一性がない(し、作曲者の独自性もわかりにくい)のだ。それゆえ、この曲を(のみならず、他のバーンスタインの曲の多くも)「名曲」だと言いがたいところがある。しかし、それはそれとして、面白く聴けるのも確かであり、今回も最後まで楽しませてもらう。

 そんなバーンスタインの最高傑作はおそらく、《ミサ曲》(1971)だろう(もちろん、《ウェストサイド物語》もすばらしいが)。この作品は「歌手と演奏家、踊り手のための劇場用の曲」と銘打たれているので、録音を聴くだけでは十全に味わうことはできない。なので、「いつか実演に触れることができればなあ」と思っていたのに、近年、大阪でそれがなされていたのを知らずに聴き(観)逃してしまった……。残念無念。