このところようやく冬らしい寒さになり(雪が降りすぎたところにはいろいろ被害が出ているようで、それにはご同情申し上げる)、「気分はロシア音楽」である。というわけで、ここ数日はニコライ・メトネル(1880-1951)のピアノ曲を楽しんでいた。私の少年時代には彼は完全に「マイナー作曲家」だったが、このメトネルに限らず、かつては到底触れるべくもなかったロシア(ソヴィエト)作曲家の作品が昨今はそれなりに作品が取り上げられるようになっており、まことにけっこうなことである。
が、それでもロシア(の西洋)音楽の礎を築いた1人の偉大な作曲家がそれにふさわしい扱いを受けていないことに私は些か不満を覚えずにはいられない。それはアントン・ルビンシテイン(1829-94)だ。あれほど質の高い作品を多く生み出しており、ロシア音楽界の発展に大きく貢献していながら、なぜここまで「軽い」扱いしか受けないのだろうか。まさにそのこと自体が研究主題たりうると思う(たぶん、そこには人種やイデオロギーの問題が複雑に絡んでいるはずだ)。ともあれ、従来のロシア(ソヴィエト)音楽史観にとらわれない若い研究者の手になる今後の再評価に期待しよう。