プロコフィエフに《物自体 Chose en soi》op. 45(1928)という曲がある(https://www.youtube.com/watch?v=12MrAi5pXo4)。何とも不思議な題名だが、彼の自伝には(作曲時期とはかなり異なる時期についての事だとはいえ)「カントを読み」云々とあるので、これはカントから借用したと考えるのが妥当だろう(ただし、自身の手になる解説ではカントの名は出てこないので、その「借用」は意図せず無意識に行ったことなのかもしれない)。ともあれ、このプロコフィエフの《物自体》は何とも不思議な味わいの音楽で、あまり演奏頻度は高くないようだが、名曲だと私は思う。
そういえば、プロコフィエフには《Pensées》(1933-34)という作品があり(https://www.youtube.com/watch?v=UASn6myKlP0)、これも、もしかしたらパスカルのあの書が作曲者の(無意識の)頭の片隅にあったのかもしれない。この曲はまことに渋い、優れた作品だと思うが、やはりあまり演奏されないようだ。残念。