たまたまご近所図書館で次の本を手にとって、ぱらぱらとめくってみて面白そうなので借りてきた:アルバン・コジマ『アレクセイ・スルタノフ――伝説の若き天才ピアニスト』(アルファベータブックス、2017年)。読み進めてみると、やはり面白い。
書名にある通り、夭折の天才ピアニストを論じたものであり、スルタノフの演奏スタイルとその特徴を実に巧みに描き出している(これを読んで、それまで全く興味がなかったこのピアニストの録音を聴いてみたいと思った)。
が、それに留まらず、現在の一般的な演奏スタイルへの鋭い批評も繰り広げられており、そこがまたよい(それはありがちな「昔はよかったなあ」式のものではなく、「演奏」という行為の意味を冷静に問い直すものだ。その中で著者はユジャ・ワンを高く評価しているが、この人がもっと詳しく彼女のことを論じてくれるとうれしい)。また、今日you tubeが音楽コミュニケーションにおいて持つ意義についても肯定的に論じており、そこにも私は共感を覚えた次第。