2020年12月2日水曜日

昨年末にはブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』に

 今年も早、師走である。思えば妙な年であった。が、たとえどんな状況であろうと「今」を大切にして生きていくしかない。というわけで、泥沼の翻訳(の校正作業)からの脱出を!

 

昨年のこの時期、ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』(水野忠夫・訳、河出書房新社、2008年)に読み耽っていた(なぜか年末になると、こうした「重たい」ものを読みたくなるのだ。ちなみに、一昨年に驚愕しつつ耽読していたのはフィリップ・ショートの『ポル・ポト ある悪夢の歴史』(山形浩生・訳、白水社、2008年))。

何とも不思議なシーンの連続に眩暈にも似た感覚を抱きながらも、空き時間に読み続けた。この小説が生まれたのはスターリン時代だが(当然、当時には発表することなど叶わなかった)、よくもまあ、こうしたものが書けたものだと驚かされる。が、逆にそんな過酷な状況だからこそ、一人の作家として「生き抜く」ためにどうしても書かねばならないものだったのかもしれない(その理屈からすれば、現在の日本では優れた文学作品が生まれる1つの条件が整っているとは言えよう)。

この『巨匠とマルガリータ』は確かに「重たい」小説だが、そこには「笑い」が欠けていない。しかも、それはたんにシニカルなだけではなく、何か不思議な「開放感」や「おおらかさ」を伴っている(ように私には感じられる)。ブルガーコフと同じ1891年に(しかも同じウクライナで)生まれているのがプロコフィエフで、だからというわけではないが、なんとなく両者には何かしら相通じるところがあるように感じられる(これも、あくまでも私個人の感じ方にすぎないが)。

さて、今年の暮れには何に読み耽ることにしようか。もっとも、それを決める前に、泥沼からの脱出を!