今年の初めにフリードリヒ・グルダ(1930-2000)の未発表作品《交響曲 ト長調》(1970)のCDが発売された。作曲者指揮の録音が発見され、作曲語半世紀にして初のお目見えと相成ったわけだ。
どんな曲か気になっていたが、なかなか自分の中での「聴く順番」がまわってこず、CDを注文していなかった。が、昨日、ものは試しとYou tubeを検索したところ、何と、あるではないか:https://www.youtube.com/watch?v=EJbia0JgOkk。
そこでさっそく聴いてみた。が、結論からいえば、「未発表で正解」というものだった。それは諸ジャンルのフュージョン音楽で、面白いといえば面白いのだが、どうも何か生煮えの感じがして、あまり笑えない「ギャグ」のような感じすら覚えた。もし、作曲者がこの作品に自信を持っていたのならば迷わず発表していただろうが、そうしなかったということは、それに値しないと考えたからだろう。
「作曲家」グルダの交響的作品としては80年代に3つの名作がある。すなわち、《私自身のための協奏曲》、《チェロ協奏曲》、《ウルズラのための協奏曲》がそれであり、最所の2つは今やレパートリーとして定着している。中でも《チェロ協奏曲》はいくつも録音がある人気曲だ(私も実演で聴いたことがある。《私自身のための協奏曲》はピアノ協奏曲だが、独奏パートにはしばしば即興のための空白があり、これがクラシックの演奏家にとっては躓きの石になっているようだ)。そこにもある種の「ギャグ」はあるのだが、板についていて、私は素直に楽しめる。
先の《交響曲》を探して際、たまたまその《チェロ協奏曲》の面白い動画を見つけた。たぶん、作曲者がこれを見たら小躍りして喜んだだろう:https://www.youtube.com/watch?v=lU9VJJg5NW4。
全5楽章の他の4楽章も動画があるので、興味のある方はどうぞ。
それにしても、このフリードリヒ・グルダというまことに興味深い音楽家にはまだまだ正体不明なところがあり、その全体像の解明が望まれる。