2021年6月24日木曜日

ケクランに興味・関心はあるけれども

私が初めてケクランの名を知ったのはいつだったか……。LP時代にディスクを1枚購っているから、30年前以上なのは確かだろう。そして、最所に手に入れたCD1990年に出たもので、フルートの作品を収めたものだ。が、いかんせん、当時はまだまだ今に比べてケクランはマイナーな存在であり、ディスクの楽譜も入手が難しく、彼の作風というものが今ひとつよくわからなかった。

ケクランへの興味・関心は別な方面からも生じていた。それはすなわち、「理論家」としてのケクランに対するものである。その点で初めてお目にかかったのは、国安洋先生が「音楽と時間」という論考で引き合いに出していたリズム論である。そして、その後さらに『和声の変遷』を読み、彼がタダ者ではないことが朧気ながらわかった。が、日本語で読めるケクラン情報は限られていたので(『対位法』の邦訳もあったが)、当時はこの面でも私のケクラン理解はそれ以上先へ進まなかったのである。

ところが、その後、ケクランの作品は次第に録音が増えてきて、(彼の膨大な作品数からすればまだまだ氷山の一角にすぎないとはいえ)少なからぬものが聴けるようになったし、未邦訳の理論書を目にする機会も得た(3巻からなる『和声概論』はまさに驚くべき書であるし、その他の書式の教本もそれぞれに興味深い。残念ながら4巻からなる管弦楽法は未見)。その結果、いよいよケクランへの私の興味・関心は強まったが、「深入り」するだけの時間もなければ気力もない。

そこで、(昨日も述べたように)若い世代の人たちの研究に大いに期待するわけだ。研究だけではない。演奏の面でもケクランに取り組む人が増えればうれしい。ケクラン以外にも「あまり知られてはいないが、面白い作曲家」はいろいろといるのだから、研究・演奏の両面で若き人たちにどんどん挑戦してもらいたいものだ。