たとえばベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を何度も繰り返し録音するようなこと(なお、このベートーヴェン云々はあくまでも1つのたとえにすぎず、特定の演奏家を非難しようというのではない)を「古典」への敬意や演奏家の精進の表れだと単純に考えてよいものかどうか。もしかしたら、それは「古典」へのフェティシズムや隷属の結果かもしれないし、逆に「古典」に対する「支配欲」や「征服欲」の現れかもしれないし、己の卓越性を示すネタに古典を利用しているだけなのかもしれない。しかも、いずれの場合にせよ、当人がそのことを意識しないままに。