カメラータ・トウキョウから出ている八村義夫の作品集には残念なことに《しがらみ》op. 2（1959）が収録されていない。楽譜は1984年に出版されているが、これもずっと見る機会がなかった（音楽之友社でかつて出版されていた八村作品は現在オンデマンド販売だが、なぜか《しがらみ》はカタログにのっていない）。が、先日、古書店で購い、ようやくその音楽に触れることができた。後年の八村作品に比べれば譜面はかなりすっきりしているが、むしろそれだけに一音一音の表出力は強く感じられる。とともに、もしかしたら後年の作風とは違った方向に進む可能性もあったのではないか、とも思わされた。とにかく面白い作品である。いずれ実演で聴いてみたいものだ。
