2021年8月25日水曜日

日本人にはドイツ系音楽よりもラテン系音楽の方が向いている!?

  「ドイツ音楽は本来、建築的な構造美を主体としたもので、繊細な感性に長けた日本人には、むしろフランスやイタリアのラテン系の芸術に近い資質を感ずるはずである」というのは金澤攝さんの意見(『失われた音楽――秘曲の封印を解く』、龜鳴屋、2005年、18頁)。なるほど、そういう見方もありえよう。

「ドイツ音楽」よりも「フランスやイタリアのラテン系の」音楽の方が日本人には向いているということは、別の面からも言えるかもしれない。すなわち、欧米諸語は日本語とリズムがかなり異なってはいるが、それでもドイツ語(や英語)のリズムよりもラテン系言語のリズムの方がまだ近く、それは音楽の受け取り方にも反映されていると考えられるからだ(言語のリズムやプロソディと音楽との関係はこれから精査されてしかるべき問題である)。

日本の洋楽受容の土台はドイツ系の音楽であり、それゆえに長らくその優勢が続いたが、これからはどうなるだろうか。東京藝大の音楽理論教育は今やフランス系にほぼ完全に変わってしまったが、その影響がこれからどのように出てくるのか、少なくとも私は興味津々である。