今日は京都に演奏会へ出かけてきた。それは「打楽器アンサンブルコンサート vol. 2 アンサンブルさいさい 會田瑞樹氏を迎えて」(於:京都文化博物館別館ホール)である。演目は次の通り(このグループについては次を参照:https://www.concertsquare.jp/blog/2021/202108023.html。グループ名の説明がないのは残念):
・Steve Reich《nagoya marimbas》
・Kevin Bobo《Quartet for Four Snare Drums》
・加藤大輝《Twins (auxiliary percussion duo)》
・Pawassar Rudiger(Arr. Peter J Saleh)《Sculpture 2》
・久保哲朗《Falls in silence》
・會田 瑞樹 ヴィブラフォン1台2重奏の《雨の降る前に――ヴィブラフォンのための―――》 (委嘱初演)
・武満徹《雨の樹》
全く「気分爽快」の一語に尽きる演奏会だった。選曲はマニアックなものではなく、普通の聴き手も十分に楽しませ、打楽器が生み出す音楽の魅力を味わわせてくれるものだった。そのためか、会場はかなりの入りで、なかなかよい感じだった。
私にとってもどの曲もそれぞれに楽しかったが、前半でもっとも面白かったのがボボ作品だ。4つのスネア・ドラムが織りなすまことに多彩かつ劇的な表現ぐっと引き込まれてしまう。音楽にそこはかとなくユーモア感が漂っていたのもよい。
が、この演奏会での私のお目当ては後半の《雨の樹》だった。この曲は1980年以降の武満作品で唯一好きな曲なのだが、今まで実演に触れる機会がなかったのである。それが今回、ようやく実現する、しかも、その前に會田の新作が聴けるというのだから、まさに絶好の機会ではないか。
さて、まず會田の新作だが、1台のヴィブラフォンを2人の奏者が演奏するというもの。これが聴覚の面でも視覚の面でもまことに「サーヴィス精神」旺盛な作品で、とにかく目と耳が離せなかった。肝心の「雨」が降るまでにいささか時間がかかったものの、武満作品のたんなる「前座」ではなかった。そして、お目当ての《雨の樹》だが、実演での響きの何と美しいことか。そして、その響きを生み出す奏者たちの所作もまた。この曲にも絶妙のユーモアが感じられるが、その頂点は終わり頃(楽譜でいえば14頁め)に出てくる、なんとも唐突な下行音型である。私はこの箇所をこよなく愛するのだが、これを実演で動作を見ながら聴けることの幸せをかみしめた(なお、欲を言えば、もう少し「唐突感」があれば、そして、2回めの「エコー」の表現にもう一工夫あればさらによかったと思う)。
この演奏会にはもう1つ、予想外の楽しみがあった。それはアンコールで、何とヴィヴァルディの《調和の霊感》の第11番を「打楽器8重奏」(!)に會田が編曲したものが演奏されたのである。この何とも賑やかで奇想天外の、それでいて「ツボ」はしかと押さえた編曲を聴き、「ああ、よい演奏会を聴かせてもらったなあ」としみじみ思った次第。というわけで、ご招待くださり、相変わらず魅力的なパフォーマンスを聴かせてくださった會田さん、そして、この演奏会を企画・実現し、楽しい音楽を聴かせてくださった「アンサンブルさいさい」の皆様、どうもありがとうございました。