2020年9月22日火曜日

それほど「独創的」ではなくとも

  別にそれほど目立って「独創的」ではないが「よい」作品というのは少なからずある。が、そうした作品に対して従来の音楽史はまことに冷淡だった。作曲家の生前にはそれなりに受容されてはいても死後に人気が衰えた作品には「時の試練に耐えられなかった失格品」だとか「亜流」だとかの烙印を押し、ほとんど顧みないのだ。

 だが、これは考えてみればおかしな話である。というのも、「歌は世につれ」といわれるように、人々の好みは常に変わっていくのが当たり前なのに、その「変わって」しまった後の時代の感覚でもって昔の「歌」を評価しようというのだから。全く流行らなかったものならともかく、いちおうそれなりに流行った作品であれば、やはりそれなりの遇し方というものがあるのではないか。

 幸い今やそうした「よい」作品があれこれ発掘・蘇演されていっているが、それは「未知のもの」に触れる喜びをもたらしてくれるだけではなく、これまで「知っている」つもりでいたもの(すでに公認されている「ビッグ・ネーム」の音楽)についても違った見方をもたらしてくれる。というわけで、演奏家には「お決まりの名曲」ばかり弾かずにもっとどんどんあまり知られていない「よい」作品を見つけて、それを魅力的な「企画」の中で取り上げてくれることを期待したい。「情けは人(=聴き手)のためならず」ということもあることだし。