2020年9月28日月曜日

いくら何でも5回目というのは

  ダニエル・バレンボイム(1942-)が5回目になるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を録音し、もうじきCDが発売されるとか。これにはすっかり驚いてしまった。演奏家がベートーヴェンのソナタを繰り返し取り上げたいという気持ちはわからないではない。それに値する作品群だから。私が驚くのは、その「5回目の録音」を商品として発売するディスク制作会社(ドイツ・グラモフォン)の旧態依然たるセンスに対してである(まあ、5回も録音してしまうバレンボイムへの疑念が全くないといえば嘘になるが)。

1980年代までならば、「巨匠による名曲の再録音」は十分商品価値を持っていただろう。が、ただでさえディスクが売れなくなっているこのご時世に、いくらバレンボイムが名手だからとはいえ、5回目の「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」がそれほど売れるわけがない。バレンボイムの熱烈なファンやベートーヴェンのピアノ・ソナタの録音マニアならばともかく、果たして普通の聴き手がこの新譜に手を伸ばすだろうか? ともあれ、その実売数がどうなるか、大いに興味が持たれるところだ(メーカーは公表しないだろうけれども)。

 ところで、私が所持しているベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集のCDを数えてみたら20組あった。これ以上、積極的に新たなセットをそこに加えたいとは思わない。が、そんな私に「これは欲しい!」と思わせてくれるような比較的若い優れたピアニストのCDが登場してくれることへの期待はある(が、それを積極的に探すことはせず、偶然の出会いを待つのみだ。他に聴きたい音楽、未だ知らない音楽はいくらでもあるのだから)。

 

 小室直樹(1932-2010) の『日本国憲法の問題点』(集英社インターナショナル、2002年)を読むと、なるほど確かにこの国での憲法に関する議論が大いに「ずれて」いることがよくわかる。とともに、義務教育で肝心なこと(「憲法」に限らず、世界の人々の行動原理たる宗教、政治、経済の基本)を何も教えていないことも……。