音楽作品の演奏について、「作曲家の意図したことに忠実な表現を目指す」という演奏家には「もっと自由におやりなさい」と言いたくなるし、逆に「自分が思うがまま、感じるがままに演奏する」という人には「作曲家が作品の中で語っていることにもう少し注意深く耳を傾けた方がいいんじゃないかなあ」とつぶやきたくなる。
以前あまりぴんと来なかった作曲家なり作品なりが楽しめるようになるというのはやはりうれしいものだ。私にとってシューマンの交響曲などはまさにそうした部類に属する。10年前にはどこが面白いのかよくわからなかったが、今や大いに楽しめる。もちろん、その逆もあり、以前は面白くてしょうがなかったものが今では色褪せて聞こえることも。これは寂しいが、まあ、仕方がない。人間関係でもいつのまにか疎遠になることがあるのと同じだ。