またしても娘に「整体」関連の本を薦められて読んでいるが、内容はもちろん、著者の語り口がどうにも面白くてたまらない。野口晴哉『体癖』(ちくま文庫、2013年)がそれだ。著者の野口晴哉(1911-76)は「体癖」という概念と語を考え出した人で、その整体術(論)は「野口整体」という名で知られるそうだが(先に話題にした片山洋次郎『身体にきく』もこの「野口整体」が土台にある)、彼の考え方は私にはまことに興味深い。
さて、身体の癖、「体癖」が人のものの考え方や感じ方と密接に結びついているのだとすれば、当然、音楽性についても同じことが言えるだろう。そして、それは「どの(「声」も含む)楽器を選ぶか」という時点から関わっているはずだ。「楽器(別の人の)性格論」のようなことが時折戯れに言われるが、案外、物事の核心を突いているのやもしれぬ。ただ、そうした論では得てして「体型」が問題にされるのだが、これを「体癖」という観点から見直してみれば面白かろう。
さらに言えば、種々の性格の異なる楽器の集合体たる管弦楽が人体にたとえられるならば、それを率いる指揮者はいわば「整体師」だと言えようか。各々の持ち味(癖)を活かしつつ調和を生み出す「技」を備えた人のことだと。