1980年以降の武満徹作品で私が好む作品は(今のところ)1つしかない(これからはもう少し増える可能性はあるし、そうなって欲しい)。それは《雨の樹》(1981)だ(https://www.youtube.com/watch?v=mdUcOy15cZM)。初演当時、NHKの「現代の音楽の時間」で初めて聴いたときに魅せられて以来、この曲への「愛」は変わらない。
それには作品の魅力もさることながら、あまり音が延びず、音色が涼しげな(鍵盤)打楽器が用いられているために、この時期以降の武満作品ほどには旋律や和声が「甘ったるく」聞こえないということもあろう(ただ、それならば80年代以降のピアノ曲も同様に私は楽しめるはずだが、そうではない。やはり、この《雨の樹》の音楽のありように私は魅せられているわけだ)。大学からスコアを借りてきて眺めつつ聴き直してみたが、やはり素敵な曲である。しかも、これを聴いていると心が落ち着いてくるのだ。
そのスコアには「3人の打楽器奏者(あるいは3人の鍵盤楽器奏者)のために」と記されているが、ピアノや電子楽器で演奏してもかまわないということなのだろうか(そうした演奏は聴いたことはないが)。だとしたら、それはそれで面白かろう。