2021年7月28日水曜日

イタリア歌曲を教育学部音楽科の入試課題に用いるのは止めよう!

 昔々、私が地方国立大学の教育学部の「中学校教員養成課程・音楽専攻」なるもの(その母校の音楽科は今はもうない……)を受験したときには、実技試験として『コール・ユーブンゲン』と『コンコーネ50番』(予め示された範囲から当日指定)、楽典、指定されたイタリア歌曲、J. S. バッハの《シンフォニア》の中から任意の1曲、自由曲の演奏、が課されていた。

 この中で「イタリア歌曲」というのは、今にして思えば、まことにマズい課題である。そもそも受験生はイタリア語など学んだこともなく、多くの者がただ試験を通過するという目的だけのために短期間のレッスンを受け、表面的に「カタカナ発音(ただしrは巻き舌!)」で正しいイントネーションやプロソディなどおかまいなしに「イタリア歌曲」を歌うことになるからだ。そして、それは意味がないどころか、むしろ有害である。注意深く、しかもゆっくりと学ぶべき「音楽と言葉の結びつき」に対して目を閉じさせて(耳をふさがせて)しまうからだ(事実、私はこの問題に長らく気づかなかった(恥)。そして、近年、まことに遅ればせながら慌てていろいろと勉強している次第)。いずれ小中高の教員になり、音楽科教育を担うであろう者たちにとって、これはよくないことだった。

調べてみると、国立大学法人の教育(系)学部音楽専攻の入試では今でもこの「イタリア歌曲」を入試に課しているところが少なくない。が、この悪しき習慣は即刻止めにすべきだ。受験生が知りもしない外国語の歌ではなく、日本の歌を課題にすればよいではないか。そして、外国語とのつきあい方は歌の専門家が入学後に懇切丁寧に指導すべきであろう(私の場合、学部学生時代、ついぞ「カタカナ・イタリア語」「カタカナ・ドイツ語」以上の歌い方を歌の先生から教わったことはなかったが、さすがに今ではそんなことはないだろう(……と思いたい))。