このところヴァルター・ギーゼキングの録音をあれこれ聴いている。すると、彼の演奏は「新即物主義」の様式だと語られることが多いが、そんな単純なものではないことが改めて強く実感される。
たとえば、1938年録音のラヴェル〈スカルボ〉などはどうだろうか:https://www.youtube.com/watch?v=yuusdZnH-V8。基本的には抑制とコントロールの利いた演奏だが、頂点ではそうしたものをかなぐり捨てられている。そして、何事もなかったかのように再び元の音調に戻るのだが、この落差が面白い。
ギーゼキングはフランスものやグリーグなどを巧みに弾きこなした人ではあるが、やはりドイツ・オーストリア系の音楽の演奏に真骨頂があるように思われる。