今日はデ・キリコの展覧会を観に、妻と神戸に出かけてきた(https://www.kobecitymuseum.jp/exhibition/detail?exhibition=382)。まことにすばらしかった。キリコの絵は昔からなんとなく好きだったのだが、今回いろいろな作品を観て、自分が思っていた以上にすごい画家だったと(己のちっぽけな)認識を新たにした。
私がキリコの絵として知り、好んでいたのはのっぺらぼうのマヌカンが登場するものであり、次の絵である:https://www.artpedia.asia/melancholy-and-mystery-of-a-street/(残念ながら、この絵は展示されていなかったが)ところが、彼の画風はもっと幅広く、一生の間にかなり劇的に様変わりするのだ。そのことを知らなかったから今日は驚いたわけだが、同時にこうも思った。「なるほど、天才は何をどう描いてもさまになるものだなあ」と。これが「才人」レヴェルだと、何か1つの独自の作風を貫くことで己のアイデンティティを示す(しかない)わけだが、「天才」はそうでなく、何をどう描いても、そこにその人の証しが自ずと刻印されるのだ(これは音楽などについても言えることだ)。というわけで、そんなキリコの絵に今日は圧倒されるとともに、大いに楽しませてもらった。
ところで、キリコといえば、このジャズのアルバムだ:https://www.youtube.com/watch?v=3oHjXTZO33g&list=PLXWSlLJP98qW3D46tqMc5cXN3gip8KZUj&index=6。ジャケットに用いられた絵と同様、何ともシュールな音楽である。
先日話題にしたアイヴズ本だが、読めば読むほどに面白い。その最大の美点は『アイヴズを聴く』という書名にある通り、作品の「リスニング・ガイド」である。譜例を一切使わず、音楽の仕掛けと聴きどころを簡潔明瞭に示す著者の力量には唸らされる。読みながら、「なるほど、これはこういうことだったのか!」と蒙を啓かれることの連続だ。断言しよう。これはアイヴズ・ファン必読(懐に余裕のある方には必携)の本だと。