2024年11月28日木曜日

ギーゼキングの無言歌に聴き惚れる

  今や大曲を立派に弾けるピアニストはそれなりにいても、小品を味わい深く聴かせられる人がどれだけいるだろう? ギーゼキングが奏でるメンデルスゾーンの無言歌を聴き、ふと、そんなことを思った。

 ギーゼキングは何でも弾ける人であり、(録音から判断する限り)大曲でも説得力のある演奏をした。が、この人は小品を弾かせても実にうまい。上記のメンデルスゾーンなども、17曲続けて聴いても少しも飽きが来ない。ピアノでまさに「言葉のない歌」を見事に歌いきってみせるのだから(https://www.youtube.com/watch?v=vhm0kWF5aBA)。その芸にはただただ聴き惚れてしまう。そして、昔はそんなピアニストが少なくなかった。

 たとえばジョルジュ・シフラ(1921-94)もまさにそのようなピアニストだった。彼の超絶技巧の演奏ぶりに対しては内容空虚だとの批判もあったようだが、とんでもない。もちろん、彼の芸風にぴったりの作品もあれば、そうでないものもあった。が、あれだけ小品を見事に弾ける人を軽んじてよいとは私は思わない。