昔、SP盤をLPに転写する際、ピッチがおかしくなっているものがたまにあった。私が少年時代、コルトー演奏のショパンのエチュード集を購い、帰宅して再生してみると、ピッチが半音高くてがっかりした記憶がある。ピッチが半音も違うと(そして、それ以上に気色悪いのが、テンポが不自然に――いわば早回しの映像のように――速くなることだ)、別の音楽に感じられたからだ。当時の私にとって、1枚のLP盤の買い物は一大決心を要するものであったのに……。
さすがに現在にはそのような転写に際してのピッチの狂いはほとんどないようだが、皆無だというわけでもない。昨今は著作権の切れた録音を「盤起こし」、すなわち、マスター・テープからではなく、発売されたディスクを元に作成したCDがあれこれあるのだが、その中にはまことに良質なディスクもあれば、音質が格段に下がっていたりピッチがおかしくなっていたりするものもあるのだ(そのような場合、オリジナルのディスク自体のピッチがおかしいこともあるかもしれないが、転写する際に修正することはできるはずだ)。そして、後者のようなものをうっかり掴まされてしまった場合、私はそのメーカーのものは二度と手を出さないことにしている(たとえば、ギオマール・ノヴァエスの録音を集めた14枚組のセットを出しているVENIASなど。その1枚にショパンのワルツを収めたディスクがあるのだが、すべてのワルツでピッチが半音高い! 同じディスクにある第3ソナタのピッチは正しいにもかかわらず。ともあれ杜撰だとしかいいようがなく、このメーカーとはサヨナラである)。
このブログでは基本的に日々の雑感やたわいもないことを書き綴ってきており、その方針はこれからも変わらない。が、もう少し内容のあることを書き、そうしたものが書けたときにのみ公表し、人様に読んでもらいたいという気持ちもある。ならば、ホームページを開設すればよいのだろうが、それも今ひとつ億劫になってしまった。すると、もう1つくらい別なブログをつくり、使い分ければよいのかもしれない。 しばらく考えてみることにしよう。