アイヴズの作品は演奏者がよほど明確なヴィジョンやイメージを持って臨まないことにはたんなる音の羅列、あるいは混沌に陥ってしまう可能性が多分にある。実際、そうした演奏は少なくないようだ。
そのアイヴズの自作自演の録音がある。それは1つひとつの曲をきちんと弾いたものというよりも、自作を弾き散らしたという類のものなのだが、それでもまことに面白い。そこからは彼が自分の音楽をどのようにとらえているかが、そして、どう演奏されることを望んでいるかがかなりよくわかるように思われるからだ。
録音の数自体はさほど多くはないが、アイヴズが奏でる音楽はまことに生き生きとしており、豊かに響く。中でも《コンコード・ソナタ》の抜粋がいくつか含まれていて興味深い(そのうち第3楽章のみ、すべて弾かれている(https://www.youtube.com/watch?v=HImm9bULDBE))。