数日前に「小学校の5,6年生も教科担任制に」云々という事を見たが、さもあるべし。このことが取りざたされるのは「受験教科」のことを慮ってのことだろうが、音楽科も当然、教科担任制にすべきである。なんとなれば、それは特殊技能なのだから。
小学校では1人の教員が全教科を教えることになっているが、それは「タテマエ」である。私が小学生だった40数年前(つまり、戦後の制度が始まって30年前後の頃)には体育、音楽、美術、家庭科はクラス担任とは異なる教員が担当していた。そして、その後も仄聞する限りではその状況が改善された様子はあまりない。それはつまり、それらの教科が教員の勉強や努力次第でなんとかなるものではない「特殊技能」だったからだろう。
にもかかわらず、制度上は教員は全教科を担当しなければならず、教員免許を受けるにはその全教科の単位を取得していなければならず、教員志望者は採用試験でピアノの弾き歌いを課せられるのだ。だから、そのためにそれまでピアノなど触ったことのない学生が「教採」突破のために4年間で難行苦行に耐え、かたちだけはものにするが、所詮付け焼き刃だから現場ではその「技能」は役には立たない(もちろん、本当に授業を行えるだけの技能を身につけた人も少なからずいようが)。それゆえ、音楽の授業は「専科」の教員に任せることになるわけだ。
こうした現実がある以上、つまらない「タテマエ」(教育理念!?)は捨てて、音楽科などの特殊技能科目は専科の教員が担当するよう制度を変えるべきだ。そうすれば、(1)児童が質のよい授業を受けられるようになる。(2)小学校教員志望の学生に余計な苦役を強いる必要がなくなり、学生もそこから解放される。(3)学生に一律に音楽の実技指導をする必要がなく(専科教員志望者のみに指導をすればよく)なるので、教員養成の手間とコストをいくらか削減できる――と、よいことづくめである。……が、これまで何人かの音楽教育関係者にこの持論をぶつけてみたことがあるが、あまり反応がよくなかった。なぜだろう?