2020年8月6日木曜日

「バッハ=ブゾーニ」といえば……

 今や次第に知られつつあるブゾーニ編の《ゴルトベルク変奏曲》はピアノという楽器を十分に活用した創造的編曲である。1980年代以降に掃いて捨てるほど出てきた「換骨奪胎的創作」の先駆的存在だともいえよう。

 ブゾーニにはそうした「バッハもの」がいろいろある。「バッハ=ブゾーニ」というとオルガン曲の、そして、有名な〈シャコンヌ〉の華麗なピアノ用編曲」が思い浮かべられがちだが、彼がそうした「普通の」編曲をものしたのは比較的若い頃に限られている。それ以降にはブゾーニはバッハの原曲に(軽重さまざまな度合いで)自由に手を加え、独自の作品(編曲)群を生み出している(その最たるものが《フーガの技法》中の未完フーガに基づく《対位法のファンタジア》だ)。

 ブゾーニというのはなかなかに「正体不明」な作曲家だが、そうした「バッハ絡み」の作品を通覧すれば、彼のある一面がかなりよくわかるはずだ。そしてまた、原曲のバッハ作品が持つ深みや広がりも見えてくるだろう。

 たとえば、ブゾーニ編《ゴルトベルク》が実演で聴けるならば、原曲の実演を10年間聴けなくともかまわないとさえ思う。……と書いてから、昔、金澤攝さんの実演を聴いたことを思い出した。が、それでももう一度くらいは実演で聴いてみたい。