クラシック音楽を題材にした日本の小説、戯曲、漫画、ドラマ、映画がいろいろある。たいていはどこか妙な具合に美化、もしくは戯画化されており、あるいは。ごく基本的な設定におよそ現実離れしたところがあって、素直に読んだり観たりすることができるものはあまりない(その点、『のだめカンタービレ』はよくできていた方だと思う。が、「リアリティ」という点で問題がなく、「物語」として私がもっとも楽しめたのは、くらもちふさこの名作『いつもポケットにショパン』だ。これは当時ピアノを習っていた先生宅で雑誌の連載をリアルタイムで読んでおり、レッスン自体よりも格段にこちらの方が楽しみだった)。もっとも、「お話」として面白ければそれでよいと割り切れば、そこそこ楽しめる作品がそれなりにあるのも確かで、細かいことにいちいち目くじらを立てるのもどうかとは思う。
それはともかく、そうした日本の小説その他の「クラシック音楽もの」について、一度詳しく調べてみたら面白かろう(これはきちんとやれば、十分に本が一冊書ける主題である。奇特な方は是非、取り組まれたい)。クラシック音楽について一般の人が抱くイメージ(とその時代毎の違い)が何かしらそこからは見えてくるかもしれない。