今年はレナード・バーンスタイン(1918-90)の没後30年だ。彼はまさに多方面に才能を発揮した「オーケストラ的人間」だが、その1つに教育・啓蒙活動がある。それがはっきり現れているのが『若人のためのコンサート Young People’s Concerts』(この‘Young People’という語は「青少年」と訳されることもあったが、さすがに今となっては不適切訳であろう)であり、そこでバーンスタインは音楽の多面的な魅力を実に見事にわかりやすく、魅力的に言葉と音楽の両方で示している。それゆえ、半世紀以上前のもの(1958-72年)であっても、今でも十分に見るに値する名企画だ。
私はそれを随分前に出た9枚組のDVDで折に触れ楽しんでいた(なお、そこには全52回のうち25回分しか収められていない。ところが、昨年、すべてではないにしてもかなりの部分を収めたDVDが3つのセットに分かれて発売された)。が、これは輸入盤なので字幕がなく、英語の音声で聞き取りにくいところが随所にある(恥)。そこで「バーンスタインの語りのスクリプトがあれば便利なのになあ」とずっと思っていた。そこで、今日、試しに探してみたところ、何とあるではないか! それはLeonard Bernstein Officeが太っ腹にも公開しているもので(ありがとう!)、全52回分のスクリプトを見ることができるのだ(たとえば、第1回分:https://www.leonardbernstein.com/lectures/television-scripts/young-peoples-concerts/what-does-music-mean)。いや、これは便利だ(新しい方のDVDは見たことはないが、レヴューによると日本語字幕が酷いそうだから、このスクリプトは役に立つだろう)。
ところで、このスクリプトと映像(かなりのものがyou tubeで見られる)は音楽を学んでいる若者(に限らず、音楽に興味のある老若男女)で英語のリスニング(さらには、用語も含めてクラシック音楽に関連する英語表現)を学びたい人にとってはまことに素晴らしいアイテムであろう。
以前はわからなかったり、気づかなかったりしたことについて、後になってようやく理解できたり実感できたりすることがいろいろある。それが些細なことならばよいのだが、「なぜ、あのときに気づけなかったのか??」とかなり大きな後悔の念を抱くことも……。そうはいっても時計の針は元には戻せないので、その気づきをこれからに遅ればせながら活かすしかない。