2020年8月29日土曜日

バルトークのバッハへのオマージュ

  バルトークの《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》(https://www.youtube.com/watch?v=VtdCRPglq-g)はまず間違いなくJ. S. バッハへのオマージュである。第1楽章が「シャコンヌのテンポで」、第2楽章がフーガとなれば、どうしたってバッハの無伴奏ヴァイオリンのソナタやパルティータを思い出さないわけにはいかない。

だが、私がもっとも強く「オマージュ」を感じるのは第1楽章の最初の和音だ。これはバッハのト短調ソナタ冒頭と同じものをバルトークが意図的に置いたのではなかろうか。ただ、バッハの場合には音はなだらかに下がっていくのに、バルトークの方では初めは下がるもののすぐに向きを変えて力強く上がっていくのだ。何とも強烈な意志の力がそこに感じられる。

以前、某ヴァイオリニストがこのソナタを弾くのを間近で聴いたことがあるが、これは本当に素晴らしかった。もうこれ以上実演で聴く必要を感じないほどに。