圧倒的なヴォリュームで迫る音楽も時には悪くない。が、自分の好みでいえば、概してすっきりした音数の少なめの音楽の方がしっくりくる。というわけで、今日はセロニアス・モンク(1917-82)の『ブリリアント・コーナーズ』(1957)を楽しんでいた。何度聴いても新鮮さを失わない名盤である。
タイトル曲の《ブリリアント・コーナーズ》はまことに異様な主題で、およそ「ブリリアント」とは言いがたい感じがするのだが、音楽が進むうちに理屈抜きに引き込まれていく。緩急の変化が実に面白く、なるほど「コーナーズ」と複数形なのもうなずける(https://www.youtube.com/watch?v=VAK0Z3cIGGE)。《パノニカ》での何ともcuteなチェレスタにはうっとりさせられるし、《ベムシャ・スウィング》でのおどろおどろしくもどこか「可笑しい」ティンパニには愉快な気分にさせられる。他の2曲もそれぞれに面白いのだが、とにかく音楽が実にすっきりしており無駄がなく、それでいて少しも窮屈な感じがしない。そして、随所のさまざまな音楽上の仕掛けに唸らされる。いや、まことにモンクの音楽の構想力と構成力はすばらしい。