2020年11月21日土曜日

「私的演奏協会」の勧め(1)

 シェーンベルクが「私的演奏協会」なるものを組織して自作を含む新しい音楽をどんどん紹介し、学びの場としていたのが1918-21年、つまり、今からおよそ100年前のことである(そのときの演目は次のもので見ることができる:ジョーン・アレン・スミス(山本直広・訳)『新ウィーン楽派の人々――同時台車が語るシェーンベルク、ヴェーベルン、ベルク』、音楽之友社、1995年)。この会は面白いことに非公開で会員のみを対象に行われていたのだが、それだけに当時の普通の演奏会ではなかなかお目にかかれなかったような作品がいろいろ取り上げられており、しかも、同じ作品が何度も再演されてもいた(先に「学びの場」と言い表した所以である)。

こうした演奏会の形態は、実に多種多様な音楽があり、人々の好みが細分化した現代に適しているかもしれない。ある程度志向を同じくする者が集い(それはごく少人数でもかまわない)、自分たちが演奏したかったり、聴きたかったり、あるいは聴かせたかったりする作品を取り上げる(会費制で非営利目的、かつ――シェーンベルクの会とは異なり――民主的に合議制で運営される)会をつくれば(もちろん、そうした会は作曲家抜きで、つまり、既存の古い作品のみを取り上げる場とすることもできる)、作曲家、演奏家、聴き手のそれぞれにとってメリットがいろいろあるのではないか。作曲家は作品発表の場が、演奏家は演奏の場できるし、聴き手は自分が本当に聴きたい音楽に触れることができる。しかも、そこではその三者が容易に交流できるはずなので、その結果を即座に会の運営にもフィードバックできよう。

                              (以下、次回)