2021年7月31日土曜日

「サン=サーンス・イヤー」ではあるが……

 サン=サーンス没後(まだ!)100年ということであれこれ新譜、とりわけこれまで録音がなされたことのない作品のものが出るかと思っていたが、どうも状況ははかばかしくない。が、それでも昔に比べれば好転しつつはあるので、今後に期待しよう。

 過去の音源の寄せ集めだとはいえ、次のものはなかなか悪くない:https://www.hmv.co.jp/artist_%E3%82%B5%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B9-1835-1921_000000000021312/item_%E3%82%B5%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%EF%BC%8834CD%EF%BC%89_12086895。私が知る限り、ここまでサン=サーンス作品が集められたディスクのセットはない。サン=サーンスのファンはもちろん、むしろ彼の音楽をあまり知らない人にこそお勧めしたい(私はこのセットに収録された演奏を少なからずすでにCDで持っており、聴いているが、なかなかの名演揃いである)。

 もっとも、こうした「すでに減価償却済みのアイテム」を集めたセットものが近年の新譜でかなりの割合を占めている状況というのは、やはり「クラシック音楽業界」の衰退ぶりの一端を示すものであり、そこに寂しさを覚えてしまう。が、大メーカー(過去の遺産の再利用に加え、「名手によるお決まりの名曲の新録音」を飽きもせずに送り出し続けている)の凋落の一方で、小さなレーベルが昔ならば考えられなかったような面白い企画を実現してもいるので、世の中はまだ捨てたものではない。たとえば、以前にここでも話題にしたパンチョ・ヴラディゲロフのピアノ曲を(並ではないレパートリーを並ではない演奏で次々と録音している)広瀬悦子が録音したというのだから、これは聴かずにはいられない:https://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%B4%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B2%E3%83%AD%E3%83%95%E3%80%81%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A7%EF%BC%881899-1978%EF%BC%89_000000000127080/item_%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E4%BD%9C%E5%93%81%E9%9B%86%E3%80%9C10%E3%81%AE%E5%8D%B0%E8%B1%A1%E3%80%81%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%82%A2%E7%B5%84%E6%9B%B2%E3%80%81%E5%89%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2-%E5%BA%83%E7%80%AC%E6%82%A6%E5%AD%90_12067017

 

2021年7月30日金曜日

トーマス・アデス

 英国のトーマス・アデス(1971-)が1990年代前半、つまり、若者だった頃に書いた作品を収めたCDを随分久しぶりに聴いた(たとえば、次の作品など:https://www.youtube.com/watch?v=rJoMNSRu6Ss)。初めてこの人の音楽に触れたときは即座に魅せられたが、その後、長らく関心を失っていた。が、改めて聴いてみると、いずれの作品も素直に楽しめる。深い感動や何かとんでもない驚きをもたらす類の音楽ではないが、このアデスの「地に足の着いたについたモダニズム」はまことに好ましい。この点で(そして、優れたピアニスト、指揮者という点でも)彼はベンジャミン・ブリトゥンの紛う方なき末裔である。

 そんなアデスも今年で50歳。近作は知らないので、これからいろいろと聴いてみたい。かつての「若き才人」はどう変貌したのだろうか。

 

2021年7月29日木曜日

メモ(68)

  日本人のピアノ学習者が西洋諸国の音楽の「節回し」を学ぶには、もちろん、自分で歌曲を歌ってみるのがよいのだろうが、子供にはなかなかそれは難しかろう。そこで、その「歌曲」の歌い方を名歌手の録音から耳を頼りにピアノでそっくり真似させてみるというのはどうだろうか。