2023年6月27日火曜日

しつこいようだが

  しつこいようだが、今日も《銀河鉄道999》のことを。この曲が生まれたのは1979年とのことだから、何と44年も前の話である(当時、私は中学1年生)。当時もよい曲だと思ったが、いろいろな経験を積んだ今の方が格段に面白く聞こえるし、胸にしみる。音楽のつくり(節付け、アレンジ、転調等々)も、歌詞も。

この名曲にこうした誕生物語があるとは知らなかった:https://www.youtube.com/watch?v=fwhcfr76AI4。まことに興味深い。

私は今も昔も映画を映画館で観ることはほとんどない(いろいろと観たいものもあったのだが、ぐずぐずしているうちに上映期間が終了していることがほとんどだった)のだが、『銀河鉄道999』は珍しくも劇場に出かけている。件の曲がかかるラスト・シーンでの感動は忘れがたい――などと書いていたら、久しぶりにこの映画を観たくなった。

 

私は基本的には音楽には気分を上向きにしてくれるものを求めるが、次のようなものにも耳を傾けずにはいられない:https://www.youtube.com/watch?v=4lqKh8_OeLA。B. A. ツィマーマン(1918-70)の問題作であり、今でもいろいろなことを感じ、考えさせてくれる(総譜がレンタルのみで、販売されていないのが残念)。

2023年6月25日日曜日

素敵な音楽

  いやあ、素敵な音楽だなあ。曲もパフォーマンスも実によい:https://www.youtube.com/watch?v=D_azzfaFRs0かなり昔の曲だが、こうして今でも弾かれているのを聴くとうれしくなる。そして、本人たちのパフォーマンスについてもまた:https://www.youtube.com/watch?v=0m9LtJ0oyMQ

 

2023年6月23日金曜日

『レコード芸術』誌が休刊になるとは聞いていたが

  『レコード芸術』誌が休刊(=廃刊)になるとは聞いていたが、まあ、仕方がなかろう(私も今世紀に入ってから、この雑誌をほとんど読んだことがない)。昔々、『音楽芸術』がやはり休刊に決まったときには「存続を求める署名」を(まだ若くてナイーヴだった)私もしたが、今回はしなかった。こうした情報メディアの存在意義はまだ失われていないとは私も思うが、全く異なる形態でゼロから再出発した方がよいと考えるからだ。

 その場合、「書き手→読み手」の一方通行ではなく、双方向で意見のやり取りができ、「公論」(と言うと大げさかもしれないが……)の形成に(匿名ではなく実名で)読み手も参加できるかたちにした方がよかろう。ウェブ媒体ならばそれも可能なはずだし、そうした形態はクラシック音楽界の活性化にわずかではあっても貢献できるものになるのではないか。

 その運営は必ずしも出版社である必要はなかろう。それこそ、比較的リッチな私大がやってみても悪くないと思う(残念ながら、今や国公立大学にその余裕はないだろう)。しかも、音楽の学部・学科を持つ大学よりも、むしろメディアの扱いを研究し、種々の実践を行っている大学の方がよかろう。「応用音楽(芸術)学」や「応用社会学」の1つの実験として年期を区切ってこの事業に挑戦する大学はないだろうか?

2023年6月20日火曜日

「ビートルズ de 英文法・ライブ!」

 「言語では『音』が肝心!」、そして、「音楽は言語と結びついている」ということを楽しく学べるのが次の動画だ:https://www.youtube.com/watch?v=O3ABIQK_Dw4。いや、実にすばらしい(途中でファゴット(!)が登場するところも、その自由さがとてもよい)。少年時代にこうした授業を受けたかったなあ。そして、これはクラシック音楽を学ぶ若者にこそ見てもらいたいと思う。得るところが少なからずあるはずだから。

 出演者の1人、佐藤良明氏の『英文法を哲学する』(アルク、2022年)を読了したばかりだが、これも読み応えのある本だった(https://www.amazon.co.jp/%E8%8B%B1%E6%96%87%E6%B3%95%E3%82%92%E5%93%B2%E5%AD%A6%E3%81%99%E3%82%8B-%E4%BD%90%E8%97%A4-%E8%89%AF%E6%98%8E/dp/4757439393/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=L2QRZAAR5J0Y&keywords=%E4%BD%90%E8%97%A4+%E8%89%AF%E6%98%8E&qid=1687248269&s=books&sprefix=%E4%BD%90%E8%97%A4+%E8%89%AF%E6%98%8E%2Cstripbooks%2C215&sr=1-1)。氏が訳したベイトソンの著作も大いに気になっている(ピンチョンの『ヴァインランド』は好みの問題で途中で挫折したが……)。

2023年6月18日日曜日

「天才児」なるものには興味はない。が……

  私は基本的には「天才児」なるものには興味はない。が、この少年が10年後にどのような音楽をやっているのか、聴いてみたい気はする(https://www.youtube.com/watch?v=tiopg_RCwds)。果たしてそのころ、世界はどうなっているであろうか。

 

2023年6月16日金曜日

夢想

  2冊の自著については、いずれあれこれ手を加えたいと思っている。『黄昏の調べ』の場合には大筋は変更の必要を感じないが、文章表現をもう少し改めたいし、日本の現代音楽についての章を加えたい。また、『演奏行為論』の場合にはリチャード・ローティのプラグマティズムを参照しつつ、論の改良を試みたい。そして、いずれの著書でも出典表示は年次方式に改め、註の数を減らしたい(し、できれば、註は本文と同じ頁に組み込みたい)。さて、そんな機会が実際に訪れるであろうか? だが、その前に新著を!

2023年6月13日火曜日

「日本(語)的演奏」をどうとらえればよいのか

  西洋音楽の「日本(語)的演奏」を私は一概に否定したくはない。日本語環境で生まれ育った者にとって、それはごく自然なものだからだ。そして、それで十分によさや違った面白さを味わえる作品も少なくないからだ。

 とはいえ、作品のありようによっては、そうした判断をいくらか保留したくなる場合もある。たとえば、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番第1楽章の次の演奏を聴いたとき、その美しさに魅せられる一方で、音楽があまりに平板で静的なものになっていることにかなりの物足りなさを覚えた:https://www.youtube.com/watch?v=OgnrQpXm8tI。これはまさにリズムとイントネーションの面でブラームスの母語たるドイツ語よりも格段に静的な日本語の特性(この点についての説明は長くなるし、これまでにも何度か話題にしたので、ここでは割愛する)を如実に反映した演奏である。

 その違いを実感してもらうために例をあげよう:https://www.youtube.com/watch?v=aMxJ_LDlMt8。どうだろうか? 強調される音とされない音の差(これはドイツ語の特性に由来する)は歴然としており、音の連なりがいわば「波」のようになっている。そして、その「波」が音楽に推進力をもたらしているわけだ(これを聴けば、この楽章が4分の6拍子(つまり、2拍子)だということがよくわかるし、だからこそ、時折生じるヘミオラの面白さもよく味わえるはずだ)。

 繰り返すが、最初に挙げた演奏にも魅力的なところはいろいろある。そして、1つの演奏スタイルとしてはまことによく練り上げられたものであって、それを好む人がいても当然だと思う。ただ、後に挙げた演奏と大きな違いがあるのも確か(であり、この曲の場合、私にはそれが大いに気になった)。では、そうした違いをどう(必ずしも否定一方ではなく)とらえればよいのか――これはこれからの日本の西洋音楽にとって少なからず重要な問題であろう。

2023年6月9日金曜日

とにかく今は

  以前に話題にした通り、とにかく今はシェーンベルクの音楽が面白く、楽しくて仕方がない。昔はあまりよいとは思えなかった12音技法初期と中期の作品でさえ「実はこんなに面白かったのか!?」と、今更ながらに己の不明を恥じている。これらの時期にもシェーンベルクの「表現主義マインド」は決して衰えておらず、その現れ方が異なるにすぎない――と気づくのにいったいどれだけ時間がかかったことか……。

 昨晩も《管弦楽のための変奏曲》作品31を聴いていたが、そのあまりに美しさにただただ魅了されるばかり。そして、 《組曲》作品29の整った形式の随所で噴出する濃密な表現にも圧倒される。これからの暑い季節、今年はシェーンベルクの音楽で乗り切ることにしよう!

 ところで、YouTubeを物色していたら、何と、シェーンベルクが指揮した《組曲》初演の音源があるではないか(https://www.youtube.com/watch?v=2_MX2dAL7OQ)。いや、これには驚いた。これを聴くと、やはりシェーンベルクがヴィーンの音楽家だということがよくわかる。   

2023年6月6日火曜日

メモ(99)

 「言霊の幸わう国」――少なくとも近代以降のこの国の歴史を見ていると、こう言いたくもなる。そして、それは今現在でも同じこと。いや、事態は格段に悪化しているかもしれない。ということは、この先に待ち構えているのは……。いや、そうはならないように一人ひとりが(もちろん、私も)気をつけるしかあるまい。

 

 シェーンベルクのピアノ曲の録音をあれこれ聴き直しているが、やはりエドゥアルト・シュトイアマンの演奏が最高だ。 無調による曲であろうと、12音楽技法による曲であろうと、とにかく音楽が実に生々しく迫ってくる。他方、ポリーニの無機質な演奏を聴くとため息が出る(もっとも、そこに体現されている「音楽のオブジェ化」は当時の趨勢であって、彼個人を非難するつもりは毛頭ない)。さりとて、昨今の「美音」指向の流儀でシェーンベルクを弾かれてもやはりどこか変な感じがする。難しいものである。

 

2023年6月4日日曜日

メモ(98)

 日本人の西洋音楽に影響を及ぼしているのは日本語だけではない。西洋人とは異なる日本人のエートスもまた、具体的な楽曲に対する感じ方や考え方について彼我の差を生み出さずにはおくまい。では、その「差」を西洋の(一神教が根底にある)認識論や存在論で適切に――つまり、日本の西洋音楽をたんに「紛い物」や「欠如態」にすぎないものとしてしまうことなく――とらえることができるのだろうか?  


2023年6月2日金曜日

グルダ本の復刊

  フリードリヒ・グルダの インタヴュー本がちくま学芸文庫で復刊された(https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480511737/)。原著刊行が1990年、邦訳初版(洋泉社刊)が1993年で、30年ほど昔の本だということになるが、今読んでも十分刺激的な内容だと思うし、たぶん、彼の音楽を知らない人でも楽しめるだろう。長らく入手が難しい本だったので、今回の復刊はまことに喜ばしいことである。同書を読んだ若者の感想を聞いてみたいところだ。

 

 日本語で読めるシェーンベルク関連の本は少ないが、最近出た次のものはなかなかの好著である(https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?id=221980)。この著者の本格的なシェーンベルク作品論の登場を期待したい。