2024年8月13日火曜日

ストコフスキー編の《展覧会の絵》

  一昨日。ストコフスキーのショパン編曲を話題にしたが、私がはじめて彼の編曲ものを聴いたのは、ムソルグスキーの《展覧会の絵》だった(https://www.youtube.com/watch?v=crp1SX0ZAFU)。少年時代、この曲集に熱中した時期があり、ピアノ原曲とラヴェルの管弦楽版はもちろん、ホロヴィッツのものすごい編曲(+演奏)、山下一仁のギター版、冨田勲のシンセサイザー版など、あれこれ楽しんだものである。そして、その中にストコフスキー版も含まれていた。

 「管弦楽の魔術師」ラヴェルには悪いが、《展覧会の絵》に関しては当時の私はあまり彼の編曲が好きではなかった(ちなみに、彼の弟子、マニュエル・ロザンタールもこの編曲をあまり高く評価していない。その理由は、そこでなされているのが「オーケストレーション」ではなく、「楽器を割り当てただけ」(マニュエル・ロザンタール(マルセル・マルナ編)『ラヴェル――その素顔と音楽論』、伊藤制子・訳、春秋社、1998年、102頁)だからだとか。なるほど)。そして、それに比べればストコフスキーの編曲――もちろん、彼はラヴェル編を大いに参考にしたことだろうが――の方が私にとっては面白く感じられたものである。

 今現在の私はラヴェルの編曲もそれなりに楽しく聴けるようになっているが、それでもやはり、ストコフスキー編に軍配を上げたい気がする。原曲の異様さをこちらの方がいっそう巧みに表しているように感じられるからだ(その点、ラヴェル編は整然としすぎているように聞こえる)。もちろん、これは好みの問題であり、ストコフスキー編を「悪趣味」だと感じる人もいよう。だが、この編曲を一一度は実演で聴いてみたいものだ。