2024年8月3日土曜日

しつこくもギーゼキングの話題を

  しつこくも今日もギーゼキングの話題を。昨晩、手持ちのCDでシューマンの《クライスレリアーナ》を聴いてみた(そのCDと同じ録音:https://www.youtube.com/watch?v=g-EXTCK8ZF8)。第1曲の異様な激しさに驚愕させられる(こんな演奏であることをすっかり忘れていた)。彼に「新即物主義」などというレッテルを貼ってすませられるものではないことはこの演奏からも明らかだが、それにしても……。

 もしかしたら、この演奏は録音がなされた時期が何かしら影響を及ぼしているのかもしれない。それは1942年にベルリンでの録音なのだが、当時ナチス・ドイツはまだ上り坂にあったときである(翌年から下り坂に)。ギーゼキングはナチスの同調者ではなかったようだが、この演奏に聞かれるどこか異様な緊張感は当時の世情と無関係ではあるまい。

 ギーゼキングの《クライスレリアーナ》は後年の1953年になされた録音でも聴ける(https://www.youtube.com/watch?v=1XhOQp3UsDM)。これと先の録音を聴き比べると1942年録音の方が緊張の度合いが高く、表現も激しいことがわかる。が、そうはいっても演奏解釈の根本で両者は大きく変わるものではない。そして、そのいずれの録音にせよ、今聴いても二重の意味で興味深い。1つには歴史のドキュメントとして、そして、もう1つにはこの名曲の演奏解釈としてである。