金澤節さんが「中村攝」時代に録音した『アルカン選集』の2枚目を30余年ぶりに聴く。同シリーズは全部で8枚出たのだが、私の手元には1枚目と3枚目しかなかった(4枚目も持っていたのだが、誰かに貸して行方不明。他のものは当時の財政事情故に最初から持っていなかった)ので、中古で購ったのである。そこには《12ヶ月》作品74が収められており、これがお目当てだった。
アルカンというと「超絶技巧」のイメージが強いが、必ずしもそうではなく、まことにシンプルでありながらどこか尋常でない雰囲気を持つ曲をあれこれ書いている。《12ヶ月》もそうしたものの1つで、その第1曲〈冬の夜〉をはじめて聴いたときの衝撃は忘れられない(別人の演奏だが、参考までに:https://www.youtube.com/watch?v=Pzth1MU5JFY)。
当時、アルカンはまだ「知る人ぞ知る」存在だったが、今やそれなりに有名になった。彼の作品に集中的に取り組むピアニストも何人か現れた。が、それでもまだアルカンの全貌が明らかになったとは言いがたい。この現状がどう変わるかは、彼の作品に取り組むピアニスト次第であろう。というわけで、これからのピアニストたちに大いに期待したい。