今日はいずみシンフォニエッタ大阪の第53回定期演奏会へ(https://www.izumihall.jp/schedule/20250215)。今回は「五大陸を巡るシン・音楽漫遊記」と銘打たれており(そのコンセプトについては上記リンク先を参照のこと)、演目は次の通り:
【アフリカ】M.ブレイク:クウェラ
【ヨーロッパ】P.ブーレーズ: Dérive I
【アメリカ】H.ヴィラ=ロボス:
ファゴットと弦楽合奏のための7つの音のシランダ
【オセアニア】C.ヴァイン: オーボエ協奏曲
【アジア】室元拓人: 委嘱新作(関西出身若手作曲家委嘱プロジェクト第10弾)
委嘱新作初演を含む興味深い演目であり、全体として楽しく聴かせていただいた。というわけで、はじめに演奏者、作曲者、企画運営に携わった方々に篤く御礼を申し上げたい。
さて、それはそれとして、以下、感想を自由に述べていこう(あくまでもそれは私個人のものに過ぎず、多少の暴言はご寛恕のほどを)。
最初の演目、ブレイクの《クウェラ》は完全にモーダルな音楽で、単純な和声進行の上で繰り広げられる音の戯れ(現代音楽版パッサカリアとでもいえようか)は演奏会全体の「序曲」としてはなかなかよい。この作曲者が他にどんな曲を書いているのか、ちょっと聴いてみたい気がする。
続くブゥレーズ作品はいかにも彼らしいもので、響きは文句なく美しいが、私にとってはただそれだけのものでしかなかった(「作曲家」ブゥレーズ・ファンの方々、おゆるしあれ)。他の曲との関連でなぜこの人のこの曲が選ばれたのか、かなり不可解である。
前半最後のヴィラ=ロボスはまさに彼一流の楽しい音楽だった。必ずしも傑出した作品というわけではないが、彼の音楽を聴くと幸せな気分になれる。演奏もよかった。
後半はじめのヴァイン作品も完全にモーダルな音楽であるのみならず、書法も伝統的なものだった。が、もちろん、そんなことはどうでもよい。肝心なのは音楽の中身であり、その点でこのヴァイン作品はそれなりに聴き応えのあるものだった。が、もしかしたら、それは演奏者、すなわち、オーボエ独奏の古部賢一といずみシンフォニエッタ大阪の力によるところの方が大きかったかもしれない。いずれにせよ、これも実に楽しく聴かせたもらった。
さて、最後の委嘱新作だが、実のところ私はこれが目当てだった。ある時期以降、私は新作初演で感動したことが全くなく、それだけに「今度こそは!」と思ってしまうのだろう。が、正直に言えば、今回もまた作曲家の筆の冴えに「感心」はさせられたものの、「感動」はできなかったのである。残念。作品がある意味で実によく書けたものであり、作曲者が真摯に創作に取り組んでいることは一聴すれば十分にわかる(それゆえ、この作品に感銘を受ける人がいても当然だと思う)。が、それはそれとして、今回の作品には私の心に突き刺さる音はなかった(それが1つでもあれば、「もう一度聴いてみたい!」と思うところだが……)。結局、この類の作品にとって、私は「よい」聴き手ではないのかもしれない。では、他の人はこの作品をどんなふうに聴いたのだろう? 感想を聞いてみたいものだ。とりわけ「現代音楽」業界以外の人に。
ともあれ、最後にもう一度、今日の楽しい演奏会に心からの感謝を。