ジョン・ケィジのプリペアード・ピアノ(ピアノの弦の間にいろいろな素材を挟み、音を変えてしまったもの)のための一連の作品はとても魅力的な響きがする(その一例:https://www.youtube.com/watch?v=X990zJyVguc)。が、それを個人が気軽に自分で弾いて楽しむわけにはいかない。というのも、ピアノの弦の間にいろいろなものを挟めば調律が狂ってしまうし、その挟む素材をそろえるのも難儀だから。
が、先日、ふと思いついた。「現実のプリペアード・ピアノを用意するのが無理ならば、せめて想像の中でも」と。つまり、普通のピアノで弾くときに、プリペアード・ピアノが発するであろう音を想像しつつ、あれこれ弾き方を変えてみるということだ。そこで、さっそく手持ちの楽譜《ソナタと間奏曲》(上のリンク先の作品)を取り出してきてやってみると、これがまことに楽しい。なるほど、出てくる音は本物のプリペアード・ピアノとはかなり異なる。が、それでもよいのだ。むしろ、その「隔たり」が想像力と創造力を刺激し、普通のピアノ曲を弾くときとは一味も二味も違う喜びをもたらしてくれる。というわけで、ケィジのプリペアード・ピアノ作品を愛好する方に、是非ともこの「想像上のプリペアード・ピアノ」演奏をお勧めしたい。