2020年3月18日水曜日

ああ、ややこしや

 以前話題にしたようにドイツ語の「舞台発音」と現在の発音とでは語末や音節末にあるrerの発音が大きく異なる。たとえば、Mutterの語尾の発音が前者ではərなのに対して、後者では音が母音化してしまってɐ(これは短い音ではなく、少し長めの音)となる。前綴りを例にあげれば、Versuch(試み)という語の前綴りverが前者ではferなのに対して、後者ではɐɐの下にそれが音節ではないことを示す^が本当はつくのだが、その記号がうまく出せないので省略)といった具合である。
ちなみに、今、現代の発音としてあげたものは(日本ではお馴染みの)Duden社の発音辞典(第7版、2015年)によるものだが、De Gruyter社の発音辞典(2010年)を見ると微妙に異なっているのには驚かされる。たとえば、そこではドイツ語でのrの「母音化」がさらに進んでいるとみなしており、先のVersuchverがこの辞典ではになっているのだ。また、rの発音も、Dudenではrを、De Gruyterではʁを用いている(両者の音は異なる)。他にも見比べるといろいろ違いがあって面白いといえば面白いが、外国人、しかもドイツ語学の素人にとってはなかなかに困るところだ。
現代発音によるドイツ歌曲を聴いていると、Dudenの発音に近いように聞こえるが、しかし、それとも微妙に違っているようだ(「舞台発音」ならぬ「現代歌曲発音」??)。ドイツ語圏ではそれはどのように教えられているのだろうか。そして、日本では? これにはちょっと興味がある。