だが、それはそれとして、仕事の合間にその《イベリア》の「写経」をしている。下にあげたのがそれだ。些か見づらくて恐縮だが、所々音符がカラーで記されているのがおわかりいただけよう。それには意味がある。すなわち、元々の楽譜には臨時記号が山のように付けられており、まことに読みにくいので、調号と臨時記号の別を問わず、記された音符に対して(1)X=水色 (2)#=緑色 (3)♭=赤色 (4)♭♭=紫色、で記譜したのである。そして、場合によっては調号も付け替えてある(元の楽譜にはそうすべきなのにそうなっておらず、そのために必要以上に臨時記号が多くなっている場面が散見される)。また、両手の配分も必要に応じて変更し、とにかく上段は右手、下段(それは場合によっては2段に分かれることもある)は左手で弾くように書き直してある。調号の付け替えと配分の変更についてはイグレシアス版、ゴンサレス版、ニエト版を参考にしつつ、最終的に自分で判断した。
こうして「写経」をすると、実にいろいろなことがわかって面白い。複雑な現在音楽はもちろん、後期ロマン派や近代のやたら臨時記号が多い作品については、こうした整理整頓は有効だろう(これはすでにいろいろな人が実践していることだろう。が、私は別に誰か特定の人の流儀を参考にしたわけではない)。