2020年3月4日水曜日

モシュコフスキのポロネーズ作品17の1

 モリッツ・モシュコフスキ(1854-1925)といえば、ピアノのエチュードや限られた小品が知られているだけの、「ピアニスト=作曲家」だというのが一昔前までの見方だった。が、実際には交響曲、ヴァイオリン協奏曲、オペラ、バレエなど、種々の曲種の作品をあれこれ残しており、生前にはそれなりに成功を収めている。近年は、そうした「ピアノ曲以外」の作品もあれこれ録音されるようになり、少しずつこの作曲家に対する見方も改められつつあるようだ。
 が、そうはいっても、やはりモシュコフスキの本領はピアノ曲にある。そして、事実、なかなかの名曲が少なくないのだ。にもかかわらず、残念なことにごく一部の決まった作品を除けば、それが演奏会や録音で取り上げられることはない。ああ、もったいない。
広瀬悦子といえば、これまでにもバラーキレフやリャプノフなどの些かマイナーな作品でも優れた演奏を録音してきたピアニストである。それだけに今回のモシュコフスキも大いに期待できる。
 ……と思っていたら、そのサンプルをyou tubeで聴くことができた。その中には感動の名曲ポロネーズ作品171が含まれている:https://www.youtube.com/watch?v=cuDY1-RrREY
この曲はピアニストにとって格好のレパートリーであり、聴き手にも喜ばれること必定の名曲なのに、レオポルト・ゴトフスキのピアノ・ロール用の録音を除き、たぶん、これまで録音されたことがないのではないか。なるほど、ゴトフスキの演奏はさすがに素晴らしいが、ロール用なので細かいニュアンスがとらえられていないところがあり、また、重要な部分がなぜかカットされている。それゆえ、今回の広瀬の優れた演奏はこの曲の真価を広く知らしめるものとなろう(こうなると第2弾も期待したい。その際には作品173のワルツや作品24のエチュード、あるいは、これまであまり弾かれていない作品を取り上げてくれるとうれしい)。