私が初めて買った(そして、数少ない)ジャズのLP盤は佐藤允彦トリオの『Brink』(テイチク、1983)である。これが出る年(だったか、それともその翌年だったか)の正月だったと記憶しているが、NHKのFM放送で5日連続のジャズの特番があって、その中で佐藤の演奏を聴き、とても心惹かれたからだ。そのときの演目の中に《いつか王子様が》と《ヒア・カムズ・ザ・サン》があり、それを収める(収めた?)アルバムのことを本人が話していたので「それならば!」と購ったわけだ。そして、これが実に素晴らしかったのである。
もちろん、当時の私はジャズのことなどほとんど知らなかった(今でもあまり変わりないか……)のだが、それでもとにかくそのスリリングなプレイにぐっときた。1曲めがアルバム表題作の〈ブリンク〉で、これがとにかくかっこいい(今聴いてみても、その無駄のない音づかいとノリのよさには痺れてしまう):https://www.youtube.com/watch?v=ZCNwYpWVK4g。他の収録曲もどれもよい。
ところが、その後、何度か引っ越しをするうちにこのLPが行方不明になってしまった(涙)。CD化されたときにすぐに買えばよかったのだが、「まあ、そのうち」と思っているうちに廃盤に(涙)。それゆえ、聴きたくてもずっと聴けない状態が20数年は続いたのである。が、とうとう我慢しきれなくなってamazonで中古盤を探したら、あっけなく見つかった。そこで大慌てで注文した。近日中に届くので、とにかく楽しみである。
ところで、先に述べたFM放送での演奏だが、そのときの《いつか王子様が》はトリオではなくソロだったのだが、筆舌に尽くしがたい超名演だった。これはエアチェックして長らく聴いていたのだが、カセットテープだったのでそのうち音質が劣化してきて、泣く泣くお別れすることに……。こちらはもう聴く術がないのが残念至極。まあ、それでもたまたまラジオを聴いていたから出会えた名演であり、それを知ることができただけでもよしとしなければなるまい。もの皆ご縁であり、一期一会である(とはいえ、もう一度だけでもいいから聴ければなあ……)。