2020年3月24日火曜日

もし、「現代音楽」の作曲家を誰か研究するとしたら……

 拙著『黄昏の調べ――現代音楽の行方』(春秋社、2016年)はいわゆる「現代音楽」(=20世紀の西洋芸術前衛音楽)の歴史を反省しつつ、作曲・演奏・聴取という異なる立場からそうした音楽を考察した「音楽美学」の書である。歴史に触れてはいるものの、それ自体を論じるのが目的ではなく、あくまでも今現在、さらにはこれからの芸術音楽のありようを考えるための準備作業たらんとしたものだ。
 「現代音楽」の作曲家や作品には自分が愛し、興味を持つものはあれこれあり、個別にもっと深く知ったり理解したり、そして、愛でたりしたいとは常々思っているものの、それ自体を「研究」しようという気は私にはあまりない(そもそも私には「歴史」自体を研究したいという欲求がほとんどない。歴史にはもちろん興味はあるが、それはあくまでも「今」を知り、「これから」を考えるためのものだ)。
が、もし、誰かを研究対象に選ぶとすれば、それはイタリアの中からだろう。すなわち、ジャン・フランチェスコ・マリピエロ(1882-1973)、ルイージ・ダッラピッコラ(1904-75,アルフレード・カゼッラ(1883-1947)、ブルーノ・マデルナ(1920-73)、ニッコロ・カスティリオーニ(1932-96)のうちの誰かである。彼らはその作品が魅力的なのはもちろん、何かしら面白い美学が展開できそうに思われるからだ。
 ……とはいえ、これはあくまでも「もし」の話。自分にはもっと優先順位の高い課題がいくつかあるので、どうやら「夢」に終わりそうだ。が、だとしても、彼ら(に限らず、自分が興味を持つ作曲家や作品)については学び、かつ、考え続けるつもりではあるが。