19世紀のピアノ曲の少なからぬものは一般の愛好家向けの作品、つまり、アマチュアが自分で弾いて楽しむためのものだった。あまり難しくなく、さりとて簡単すぎず、それなりに内容のある作品を当時の作曲家はせっせと書いたわけだ。
ところが、20世紀には音楽の様式がどんどん先鋭化してゆき、そうした「アマチュア向け」作品が次第に姿を消していった。「子供向け」の作品はそれなりに書かれているものの、大人向けの作品はあまりない。
そこで、この21世紀には「大人のアマチュア向け」作品を作曲家はもっと書けばよいのではないか。今やどんな様式を用いてもかまわないだけだから、調性があってもよし、なくてもよし、思い切り古風な様式でもよし、前衛的な様式でもよし。とにかく、実際にアマチュアが喜んで弾く、内容のある音楽を書けば、インターネット時代のことゆえに、それなりに受容される可能性はあろう。