拙著『黄昏の調べ』(春秋社、2016年)は「現代音楽」を論じた「音楽史」の書ではなく、「美学」の書である。必要上、歴史についてもそれなりの紙幅を割いたが、そこで本当に述べたかったのはあくまでも美学的考察であり、それに基づくささやかな「提案」だ。
以下、詳細目次をあげよう:
はじめに
第1章 芸術の精神からの「現代音楽」の誕生:現代音楽とは何か
1 不人気な音楽
2 独創性の呪縛
3 わかる者にしかわからない
4 「現代音楽」とは
第2章 昨日から今日へ:現代音楽の興亡Ⅰ――第二次大戦まで
1 調性の黄昏:あるいは現代音楽の曙光
2 他の惑星の空気:無調から十二音技法の発明へ
3 逃げ去る調性:和声から音響へ
4 素材の自由化:「外」からのクラシック音楽の解体
第3章 ファウストゥス博士の仕事場:現代音楽の詩学
1 〈構成〉という営み
2 作曲の前の作曲:あるいは「作曲」の創造
3 お気に召すまま:あるいは耳という導きの糸
4 書き尽くしの欲望
第4章 すばらしき新世界:現代音楽の興亡Ⅱ――戦後~六〇年代まで
1 短くも美しく燃え:「統一」の夢とその余韻
2 新世界より:偶然性、あるいは〈反・構成〉の思想と実践
3 アイ・ガット・サウンド:響きの追究と音楽の多様化、あるいは拡散
4 境界の溶解
第5章 聴けるものと聴けないもの:現代音楽の感性学
1 音楽そのもの:あるいはオブジェとしての音楽
2 耳だけではわからない
3 耳の想像と創造:「聴取の詩学」と「聴取の解釈学」の間で
4 多様な聴き方/新しい聴き方
第6章 宴のあと:現代音楽の興亡Ⅲ――七〇年代~世紀末まで
1 終わりの始まり
2 単純か、複雑か
3 既製品への寄生
4 鈍色の響き:あるいは「前衛」の隘路
第7章 非人間的、あまりに非人間的な:現代音楽演奏の現象学
1 演奏不可能な楽譜
2 それらしく弾くこと
3 新しい身体:演奏する身体の革新・更新
4 反訳者は反逆者:あるいは演奏の創造性
第8章 芸術の些か耐えられない重さ:現代音楽の行方
1 日の下に新しきものなし:あるいは古典芸能としての現代音楽
2 芸術から職人芸へ:あるいは「独創性」からの解放
3 誰がために楽は鳴る:あるいはコミュニケーションの回復
4 「現代音楽」から「現代の音楽」へ:あるいは音楽のプラグマティズム
おわりに
以上である。明日から2,3回に分けて、本書の概要を示した「はじめに」を掲載することにしたい。