2020年10月30日金曜日

音楽作品の「生」

 人と同様、「作品」も歳を取る。生まれたての作品にはどこか危なっかしいところがあるが、演奏を重ねるにつれて次第に成長してゆき、「若さ」に輝く時期を経て、成熟に至る。そして、多くの場合、「死」を迎える――つまり、誰からも顧みられなくなるのだ。

 とはいえ、中には演奏家の創意工夫によって「若返り」に成功して生を永らえている作品もあれば、一度死んだのちに演奏家や聴き手の力で「復活」する作品もある。

このように個々の音楽作品を見つめ、各々の作品の「生」をそれに関わる人の営みとともに描いてみると面白かろう。

 

昨日話題にしたロスバウトの指揮、南西ドイツ放送交響楽団の演奏でメシアンの《トゥランガリーラ交響曲》をCDで聴いたが、その若々しい音楽に打たれた(全10楽章のうち、第5楽章:https://www.youtube.com/watch?v=w9IMipkzKMg)。作曲(1949年)のわずか2年後の録音である。まさに「作品」も、その「演奏」もまだまだ若い頃の(そして、今日でもなかなか聴けない優れた演奏の)貴重な記録である。