先日、カルクブレンナー編の「第九」を話題にした。このカルクブレンナーと同時代人のフンメルもやはりベートーヴェンの交響曲のピアノ独奏用編曲を手がけている(ただし、第9は除く)。その楽譜を見てみると、「ピアノで無理なく弾ける」ように書かれているのがわかる。場合によってはかなりの簡略化を施し、しかし、決して稚拙には聞こえないようにうまく編曲されているのだ。ということは、己の技を見せつけようとしたリストの編曲と異なり、出版社の依頼でつくられた「ご家庭向け」編曲なのかもしれない。が、だとすると、むしろこのフンメルの編曲は今日、自分でピアノを弾く多くのアマチュアを楽しませてくれるはずで(もちろん、演奏会で取り上げられても十分聴き応えがあろう)、新版が出版されてもよいと思う。
最近シッダールタ・ムカジーの『遺伝子――親密なる人類史』を読み上げ、今は『病の「皇帝」がんに挑む』(いずれも早川書房刊)を読みながら、改めて「生」の意味についてあれこれ考えている。とともに、自分の「今」と「これから」についても。